忘れられた恋の物語
その時、目の前に突然飛田さんが現れて俺と目線を合わせるようにしゃがんだ。


「上手く行きませんでしたか?」

「はい…。難しいですね、自分の気持ちを伝えるのって。」

「言葉でその気持ちを表現するのは本当に難しいのだと、この仕事に就いてから改めて実感します。ほかの利用者の方々も、短い期間に自分の気持ちを伝えるために苦労されているのを何度も見ました。」

「…どうしたらいいんでしょう。俺はまた何も出来ずにこの期間を終えるんでしょうか?」


弱音を吐く俺に飛田さんは静かに首を振った。


「まだ今日は初日です。諦めずに頑張ってください。」


そう俺を励ます飛田さんの表情は、やはり無表情だった。飛田さんは続けて言った。


「動かないと気持ちは伝わりません。」

「…確かにそうですよね。」

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