忘れられた恋の物語
「勝手に死んだ奴をずっと想い続ける必要はない。」


彼女の目が見開かれた。


「どういう意味…。」

「俺が死んで5年も経つんだ。それなのにいつまで1人でいるんだよ。」


呆気に取られたようにただ俺を見つめる澪に、俺は少し微笑みかけた。


「こんなの完全に不思議体験だよな。全く違う顔の男が死んだ彼氏を名乗るなんて。でも何日か後には俺はいなくなるし、澪の記憶からも消えてるはず。」

「何なのこれ…詐欺?死んだ人を利用して恥ずかしくないの?こんなことしないでよ!」


澪の瞳に俺でも見たことないほどの怒りが浮かんでいた。鋭い目つきで睨まれて、付き合っていた頃に喧嘩した時のことをふと思い出した。

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