卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「ごめん、黙ってて」
しばらく、北見くんに抱きしめられて、その温もりに心が癒やされるのが分かった。
「ありがとう。じゃあ、帰ろっか」
「う、うん」
北見くんの後ろに付いて歩く私の胸のときめきと、ドキドキが止まらない。
ねぇ、北見くん。昔みたいに私をからかってるの?
私に勘違いさせないでよ。
もう私・・・
大人の男性として、北見くんに惹かれ始めている。

帰り道、音楽が流れる中、私の頭の中は、さっきの光景が繰返し映像として流れる。
横目で北見くんを見ると、聞こえ無いくらいの声で、音楽を口ずさみ、運転していた。
まるで何事も無かったように・・・
そして、私の家の下に着き、楽しい時間は終わりを告げた。
「北見くん、送ってくれてありがとう」
「先生、今日、楽しかった?」
「うん、凄く楽しかった」
「良かった。じゃあ、またお店に行くね」
「うん、またね」
私がドアを開けようとすると、
「先生」
その言葉と同時に、手を掴まれた。
私が振り向くと、北見くんが真っ直ぐに私を見つめる。
「どう・・・したの」
「ううん、何でもない。またね」
掴まれた手が離れ、私が外に出ると、北見くんは、クラクションを鳴らして帰って行った。
私の手には、北見くんの握った手の熱が、まだ残っていた。

デートの余韻も冷めやらぬある日。
今日は教室の日で、次々に質問があり、お客も少なかったから、美和が呼ぶまで店に戻らず教えていた。
あっ、飲み物無くなってる。
「皆、私、少し席を外すから、そのまま続けていてね」
私は席を外して、店の方に向かうと、北見くんが美和と話をしていた。
今まで意識しなかったけど、北見くんの微笑む横顔を見るだけで、胸がキュンとする。
お店の相談かな。
何か書類を見ながら、美和と楽しそうに話しをしている。
相手は美和、北見くんは、あくまでもコンサルとして接している。
今までは、何も感じなかった2人の目の前の光景に、今は胸が締めつけられて、もやもやする。
その時、北見くんが横目で私を見た。
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