卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
さぁ、晩ご飯の下ごしらえしよっかなぁ。
夕食の準備をしてると、インターホンが鳴った。
「誰だろう」
カメラに写る、正面玄関に立ってたのは、スーツを着た女性。
タイトスカートから長く、細い足が見え、彫りが深く、とても綺麗な女性だった。
「仕事関係の人が、家に来ることなんてないのに」
迷惑を掛けちゃいけないから、耀が居ない時は、出ないようにしている。
他の階の人のふりして、下に降りてみよう。
慌てて下におり、その女性の横を通り過ぎた。
「耀、居ないのか・・・」
その人は、高いヒールをコツコツと鳴らしながら、その場を去って行った。
目鼻立ちのはっきりした女性が通り過ぎた時、いつも耀が付けてくる香水と同じ香りがした。
確かさっき、耀って、呼び捨てだったよね・・・
私は初めて、激しい嫉妬に苛まれた。
胸が苦しい。
まさか耀が裏切るはずない・・・
でも、あの香水の香りは、間違いなく耀の服に付いてるのと同じ・・・
どうして・・・
その思いが頭をぐるぐる駆け巡った。

「ただいま」
「お、おかえりなさい」
私は平然を装って、笑顔で耀を迎えた。
「いい匂い。先にお風呂に入ってくるね」
お風呂から上がって、一緒にご飯を食べている時も、さっきのことが頭から離れない。
耀は、今日仕事であった話をしている。
「でさっ・・・」
楽しく話す耀。
さっきの女性のこと、聞いてみたいと思っても、タイミングが分からず、聞きそびれて、寝るまで過ごした。
「耀、おやすみ」
私は寝る時、必ず耀の方を向いて寝るけど、初めて耀に背を向けた。
「奈菜・・・こっち向いてよ」
耀は、私を後ろから抱きしめ、うなじに唇を落とす。
体は耀を求めてるけど、さっきの女性のことが頭に思い浮かんだ。
「ごめんね。今日、凄く疲れてるんだ」
「そっかぁ。わかったよ。ゆっくり休んでね」
私を抱きしめたまま、耀は眠った。
嫉妬心が邪魔して、耀を受け入れることが出来ない。
信じる気持ちと猜疑心が葛藤している。

次の日、仕事から帰った耀が、私の横を通った時、いつもの香りが私の鼻をかすめた。
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