卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「負けるのが怖いんですか。僕に取られるかもって」
「無いね、絶対」
「じゃあ、やりましょうよ。怖じ気づくなんて男じゃないですよ」
私は耀が、軽くあしらわれてることに段々腹が立ってきて、
「いいわよ、その勝負。耀が負けたら、高山先生とデートしても」
「奈菜!何言ってるんだよ」
「だって・・・」
「じゃあ決まり!新庄先生、絶対ですからね」
「分かったわ」
「はぁ・・・奈菜はもう・・・」
耀はため息をつき、高山先生は喜んでいた。

そして始まる、フリースロー勝負。
2人は、9回目まで、2本外し7本入れている。
「これで僕が入れたら、有利だね」
高山先生が放ったボールは、リングの縁に当り、跳ね上がって、リングの外側に落ちていった。
「あぁー、くそっ!もう少しだったのに」
「じゃあ、俺ね」
耀は深呼吸して狙いを定めてボールを放った。
弧を描いたボールは、高山先生と同じように、リングの縁に当たって、上に跳ね上がった。
「入って!お願い!」
私は神様に祈るように、大きな声で叫んだ。
そしてボールは、その声の通り、ネットの中をすり抜けた。
「やったぁ!」
私は思わず、耀に寄って抱きついた。
「凄かったよ」
「勝負は俺の勝ちだ。それと」
耀は、私の顎を上げ、唇を奪うようにキスをした。
「もう、諦めろよ。奈菜は俺にしかこんな顔しないから」
私はうっとりした顔を正気に戻して、平然な顔をした。
高山先生を見ると、首を左右に振っていた。
「ごちそうさま。そら勝てないよ。そっちは2人で戦ってるんだから」
高山先生は苦笑いしていた。
「約束だから、もう先生を諦めるよ。でも、また仕事では宜しくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」
「じゃあ、僕はあっちの広いコートに行くから」
高山先生は荷物を持って、歩いて行った。

「奈菜」
「なぁに?」
「相手の挑発に乗って、負けたらどうすんだよ」
「だって、耀がバカにされて悔しかったんだもん」
「ったく・・・」
耀はため息をつきながら、私の頭を撫でた。
「そうだ、奈菜」
「ん?」
「前に奈菜に勝ったご褒美、やっぱ貰うわ」
耀は私の腕を引き寄せ、両手で私の頬包み込み、優しく何度もキスをした。
あの時は、お互いがまだ好きを言えなかった。
今は愛を確かめるような、愛情たっぷりの口づけで、私は胸がいっぱいになった。
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