卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
俺が高校の時、合宿やバスケの練習中に、川センに内緒で、皆で聴いていた音楽を流すと、
「あっ、これ、好きなんだ」
楽しそうに鼻歌を口ずさむ奈菜の笑顔を見るだけで、俺の心は和む。
「着いたよ」
高校の近くのパーキングに止めて、歩いて高校に向かった。
「変わってないね、あの頃と」
「そうだな。不思議とあの頃に戻った感じがする」
「楽しかったもんね」
奈菜は、感慨深そうに校舎を見ていた。
「奈菜。先生に会う前に、体育館に寄ってみない?」
「うん、行ってみたい」
2人で体育館の2階に階段で上がった。
「誰もいないんだ・・・静かだね」
ちょうど空き時間だったのか、体育館は静けさに包まれていた。
「体育館、懐かしいね」
「俺達の青春が詰まってるからな」
チームメートと過ごした日々、そこに数ヶ月だけど、奈菜が加わったチームは、最高だった。
もう2度と戻れない青春。
ただ、俺の脳裏には色鮮やかに、映像が流れている。
大好きだった新庄先生への切なさも・・・
今はいい想い出になった。
そして、卒業式の告白も・・・
あの時、勇気を出して、誓った言葉・・・
勇気を出して誓ったからこそ、ずっと頑張れたんだ。

「ねぇ、奈菜」
「ん?」
「あのさ、卒業式に俺が言ったこと、覚えてる?」
奈菜の顔が、恥ずかしそうに赤く高揚したのが分かった。
「う、うん。覚えてる」
そう言って、視線を外した。
「何だった?」
「あの・・・先生が結婚相手いなかったら、俺の嫁にしてやるって・・・」
「そうだったね」
俺は奈菜を抱き寄せた。
「奈菜・・・あの時の告白、叶えさせてよ」
奈菜を体から離し、内ポケットから取り出した箱の中から、婚約指輪を取り出した。
「俺の奥さんになってくれる?」
奈菜の左手を静かにとり、薬指にゆっくりと指輪をはめた。
奈菜の目から涙が溢れ、零れ落ちて来た。
俺はその涙を指で触れる。
嬉しくても、悲しくても、怖くても、いつも涙を流す奈菜。
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