過去の名君は仮初の王に暴かれる
『イヴァンカ・クラウンが処刑された』
第二の都市ガレスの酒場でその噂を聞いたとき、ロレシオは足元で世界が崩れ去ったようなそんな感覚に陥った。
この国の最後の灯はついにかき消されたのだ。王妃の処刑の翌日に愛人との結婚式を挙げるような愚かな男によって。
そして、その瞬間から、ロレシオは亡き王妃のために生きようと誓った。
幼い敬愛は、やがて愛執と呼ぶべき感情へ変わった。他の女など欲しくなかった。
すべての功績も、愛も、劣情さえも、全て今は亡きイヴァンカ・クラウンに捧げるため。必死にこの国の建て直しに尽力しているうちに、彼の齢は、とっくにイヴァンカよりも上回ってしまった。
それでも、心に決めた人は、一人だけ――……の、はずだった。
しかし、急に現れたエルゼ・ラグベニューが、春の嵐のようにロレシオの心をかき乱す。
初めて会った時も何かがおかしかったのだ。そもそも、ロレシオは二回りも年下の政略結婚相手に手を出すつもりは微塵もなかった。
それなのに、初夜の儀を理由にロレシオはエルゼの甘い体を抱いてしまった。あの美しいサファイアブルーの瞳に囚われて、衝動が抑えられなかったのだ。
全てが終わったあと、エルゼはベッドの端で震えて泣いていた。
その時に、ロレシオは後悔した。だからこそ、一生をかけて、この罪は償わなければならないと決めた。――例え、そこに愛はなくとも。
第二の都市ガレスの酒場でその噂を聞いたとき、ロレシオは足元で世界が崩れ去ったようなそんな感覚に陥った。
この国の最後の灯はついにかき消されたのだ。王妃の処刑の翌日に愛人との結婚式を挙げるような愚かな男によって。
そして、その瞬間から、ロレシオは亡き王妃のために生きようと誓った。
幼い敬愛は、やがて愛執と呼ぶべき感情へ変わった。他の女など欲しくなかった。
すべての功績も、愛も、劣情さえも、全て今は亡きイヴァンカ・クラウンに捧げるため。必死にこの国の建て直しに尽力しているうちに、彼の齢は、とっくにイヴァンカよりも上回ってしまった。
それでも、心に決めた人は、一人だけ――……の、はずだった。
しかし、急に現れたエルゼ・ラグベニューが、春の嵐のようにロレシオの心をかき乱す。
初めて会った時も何かがおかしかったのだ。そもそも、ロレシオは二回りも年下の政略結婚相手に手を出すつもりは微塵もなかった。
それなのに、初夜の儀を理由にロレシオはエルゼの甘い体を抱いてしまった。あの美しいサファイアブルーの瞳に囚われて、衝動が抑えられなかったのだ。
全てが終わったあと、エルゼはベッドの端で震えて泣いていた。
その時に、ロレシオは後悔した。だからこそ、一生をかけて、この罪は償わなければならないと決めた。――例え、そこに愛はなくとも。