ワインとチーズとバレエと教授【番外編】

リンクから帰宅して
理緒は母親に
「フィギュアスケートを習いたい」
と申し出たが、もちろん
母は反対した。

「そんなモノに
金なんてかけれない!
女は愛想よく男に微笑んで
挨拶でもしてればいいのよ!」

と怒鳴り、父親も

「女に習い事なんていらない!」

と、一喝した。

父は建設業をしていた。

母と結婚したとき父は
羽振りが良かったが
最近の不景気で仕事が減り
イライラしていた。

収入が少なくなる度
父親のアルコールを飲む量は
増えていくばかりだった。

そして、暴力が次第に
激しくなっていった。

理緒はフィギュアスケートを
習うのは諦めるしかなかったが
毎日リンクに
行くことは止めなかった。

毎日リンクに通いつめ
コーチに指導されている
生徒の横で、勝手に
飛んだり、跳ねたり、回ったりを
繰り返す日々が続き

フィギュアスケートを
習っている女の子からは
白い目で見られても
理緒はリンクに行くのを
止めなかった。

一部の親からは
「習ってるうちの子より熱心ね」
と、更衣室で声をかけられるまで
有名になっていった。
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