ワインとチーズとバレエと教授【番外編】

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女としての嫉妬なのか
理緒が親を馬鹿にしている
態度が目につくのか
それとも、自分と違う人生を
極端に歩み出し、
成功をつかもうとしている理緒に
嫉妬しているのか
真理子はその感情を
抑えきれなくなっていた。

真理子は母親と父親から
途中までは愛されていた。

しかし真理子が高校生のとき
両親は離婚した。

離婚の数年前から家では
父と母の言い争いが
絶えなくなり、とうとう父親は
家に帰ってこなくなった。
そして、女を作り
母と正式に離婚することになったと
聞かされた。

弟の亮二は、そんな家族を
冷たい目線で見ながら
受験勉強を必死に頑張り
国立大学の医学部に入った。

自分は勉強も落ちこぼれ
生活もすさんでいきながら
保険外交員としての
道を歩んだ。

そして、金を持っている
しょうもない旦那と結婚し
しょうもない子供が
産まれたと思ったら

その子供は自分以上に
美しくなっていくー

そんな理緒を忌々しく
思ってしまう真理子がいた。

母親として自分は
失格だということは
十分理解している。

でも理緒の存在も目障りで
邪魔に感じる。

絶縁した両親に理緒を
預けることも
金をせびることもできない。

なら枕営業でもして
男から金をむしり取った方が
良いとさえ真理子は思っていた。

父が女に貢いだように
今度は自分が男から
お金をせびってやるー

そんな復讐心が真理子にはあった。

それを知ってるのか
知らないのか
理緒は嫌味なほど
まっすぐに育った。

かつて朝食に呼んだ、
枕営業の男にさえ
丁寧な口調で挨拶をし
バーベキューを断った。

そんな余裕ぶった理緒の態度を
甚だしく感じている
愚かな自分を認めざるを得なかったが
真理子にとって理緒は
手のつけられないほど
優秀で聡明すぎる子供になっていった。

まるで自分の人生と
真逆を歩いているように、

それをわざわざ
母親の真理子に
見せつけるかのように
理緒はどんどん上昇していった。

それを、母親なら
喜ぶべきだが、どうしても
理緒に対して、
不幸にさせたいという
気持ちが芽生えた。

それは、あからさまな
女としての目線だった。

きっとそれに理緒は
気付いているだろう。

それを知性と品格で
受け流すのだろうー

そんな理緒の態度に
さらに、忌々しさを
感じる自分がいた。

なので理緒には一銭も
金をやらないという
制裁を加えることにした。

結局、親がいなければ
どんなに品格を保っていても
どんなに美しくても
何もできないことを
思い知らせてやりたい
気持ちでいた。

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