妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

「それで、皇王たる所以って何かしら? きっとつまらないことでしょうね」
「初代竜の王の妄執に囚われた竜族が皇王になるのですよ。政治も、名誉も、貴族制度も、すべて初代の思うがまま。皇王はそれに従うだけのただの無能です」

 確信を持ってシルディアのは、はっ! と嘲笑う。

「なんだ。そんなこと? やっぱりつまらなかったわね」
「そんなこと……? つがいを見つけ生き延びた歴代皇王は皆、初代に乗っ取られてしまったのですよ?」
「歴代が弱かっただけの話よ。オデルはそうならないわ」
「本気で言っているのですか?」

 男が初めて動揺を見せた。
 困惑する男にシルディアは当たり前だと頷く。

「わたしはオデルを信じているわ」
「つがいを殺してしまうような男でも?」
「……それは初代の話でしょう? オデルは違うわ」

 言い切ったものの、初めて聞いた情報に内心動揺していた。
 表情に出なかったのはひとえに努力の賜物だろう。

(つがいを殺す……? 聞いたことな――いえ。何か見落としている気がするわ)
「貴女も見たはずです。歴史書を」
(そうよ、歴史書。二十歳で死ぬ竜の王にばかり目が言っていたけれど、確かに生き延びた竜の王のつがいは早々に亡くなっていたわ)

 シルディアは直近のつがいが逝去しているのを歴史書で知っただけだ。
 たった一人、オデルの祖母が若くして亡くなったのを見ただけでは、決して思い付かなかったはずだ。
 しかし、歴代竜の王が二十歳までに亡くなると気が付いたシルディアであれば、複数人つがいが亡くなっていた記述があれば予測立てて正解に辿り着いてしまうだろう。
 つがいは例外なく若くして亡くなっている、と。

(もしかしてオデルはつがいが死ぬことを知られたくなくて……?)

 オデルは最初からシルディアのためを思ってくれていたのだ。
 いまさら気が付いたシルディアの顔に花が咲く。

「ふふっ」
「何を笑っているんです?」
「いいえ、なにも?ただ――」
「ただ?」
「オデルが歴代竜の王のようにはならないって確信しただけよ」
「……どうやら、話し合う意味はなかったようですね。時間切れです」
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