妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

07.愛する君のためならば

 オデルからつがいだと宣言されてからというのも、シルディアは彼の愛情を一身に受け取っていた。
 シルディアが皇国にきて一週間が過ぎたある日。
 夜中に目が覚めたシルディアは、隣にオデルがいないことに気が付いた。

「? どこに行ったのかしら?」

 起き上がり、寝ぼけた眼で室内を見回すが、寝室には人影すらない。

(わたし、オデルと一緒に寝台に入ったことないわ。彼の寝ている姿も見たことないかもしれない……。朝昼晩と三食一緒に食事をして、最近は公務もし始めた)

 シルディアが起床した時にはすでに起きているし、就寝する時もオデルが一緒に床につくことはない。

(ちょっと待って。いったい、いつ寝てるの?)

 頭にふと過った疑問に意識が覚醒する。
 シルディアは可愛らしい天蓋をかき分け寝台から降りた。

(一つずつ部屋を回れば見つかるでしょ)

 リビングルームから厨房に向かったが、オデルの姿は見えない。

(なら執務室でしょうね)

 厨房を出てすぐ左手にある扉をノックすれば、驚いたような声が聞こえすぐに扉が開いた。
 扉を開けたのはやはりオデルで、いつもより少し髪が乱れている。

「どうしたの、こんな時間に」
「どうしたのはこっちのセリフでしょ」
「ん? 俺、何かしたかな?」
「オデル。あなた、いつ寝ているの?」

 息を呑んだオデルが苦笑して「ばれたか」と呟いた。
 オデルがリビングルームへと戻り、暖炉に火をくべるため口を開く。

「着火」

 オデルがそう言った直後に、暖炉に火がともる。

「何度見ても慣れないわね。魔法って」
「そう? 基本は妖法(ようほう)と一緒だから、そのうち慣れるよ。それに、シルディアも使えるようになるはずだよ」
「だといいけどね」

 妖精の力を借りて、使うものを妖法と呼んでいた。
 しかし、妖精のいない皇国では、妖精の力を借りる妖法は使えない。
 その代わりに使うのが魔法だ。
 ソファーに座るシルディアの隣にオデルは腰かけた。
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