妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 優し手つきを心掛け、シルディアの顔にかかった絹のような白髪を横に流してやる。
 すると大きく見開かれた目が今度は困惑を宿した。

「正直、わたしにはオデルに大切にされる心当たりがないわ」
「俺はシルディアを愛している。それ以外に理由が必要?」
「……そこはつがいとか、理由があるものだと思っていたのだけど違うのね」
「つがいって言葉は確かに便利だね。でも俺はシルディアがつがいでなくても手放さないし、好きになっていたと断言できるよ」
「すごい自信」
「そうだ。第一回目の話し合いをしたいんだけど、いいかな?」
「? なぁに?」

 こてんと首を傾げるシルディアに、意を決して口を開く。

「一ヶ月後、いや、もう三週間後か。シルディアのお披露目パーティーが決定した」
「え? わたしを外に出したくなかったんじゃ……」
「シルディアが飛び降りた時、上皇夫妻に勘付かれてしまってね。紹介しろってせっつかれてしまったんだ」
「それでお披露目パーティー……」
「嫌なら今からでも取り止める。シルディアはどうしたい?」
「もちろん参加するわ」
「はぁぁあ。……だよねぇ」

 シルディアに不参加という選択肢はない。
 返答は最初から分かっていた。
 シルディアは存外パーティーや茶会が好きだ。
 華やかな場所が好きなのか、非現実的な空間が好きなのか定かではない。
 しかし、彼女の生い立ちを思えば人と触れ合える機会はそのような場所でしかなかったのだろう。

(仕方ない。俺がどれだけ嫌だと思っても、これはケジメだ)

 話し合いをしたいと言った彼女の意見を尊重しなければならない。

「わたしは参加したいと思っているけれど、きっとオデルは嫌なんでしょうね」
「……そうだね。でも、参加しよう」
「え?」
「シルディアを傷付けてしまったお詫びだと思って、今回は何も言わない」
「……わかった。じゃあ次はちゃんと二人の落としどころを見つけよ?」
「あぁ。約束しよう」

 オデルが頷けば、シルディアが初めてふにゃりと気の抜けた笑顔を見せた。


 オデルside end
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