妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

14.プレゼント

 一週間寝込んでいた際、夢に出てきた皇太子はオデルに似ていたように思う。
 彼は滞在中、何度もシルディアに会いに来てくれた。
 毎回のようにイチゴのクッキーを携えて。

 思えば、あれは初恋というものだったのではないだろうか。
 皇太子とのやり取りを思い出すだけで、胸の奥がほんのりと温かくなる。
 その気持ちは、よく令嬢達が噂する恋というものだろう。
 懸想相手が皇太子だったため、記憶の奥底に蓋をしていた。
 ところが何の因果か、シルディアは皇王へ嫁ぐことになった。
 蓋をしていた記憶が姿を見せても不思議ではない。

 問題は、あの皇太子はオデルだったのでは? と期待してしまうこと。

 口調は違っていたし、鮮明に顔を覚えているわけでもない。
 なにせ六歳の頃の記憶だ。十年前の記憶が当てになるはずがない。

 たった一言、昔会ったことある? と問えばいいだけ。
 しかしシルディアは、その一言を口に出すことが出来なかった。
 そうして悶々とした気持ちを抱えたまま、時間だけが過ぎ去ってしまった。
< 60 / 137 >

この作品をシェア

pagetop