妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 監視の目があり、逃げ出したくても逃げられないこの状況。

(いえ、そもそも手足の縄をどうにかしないと逃げられないのだけれど……)
「だんまりかよ。つまんねぇの。それとも怯えて声もでねぇ感じ? ウケる」
「怯えてなんていないわ」
「なんだ。喋れんじゃん。そうこなきゃな。泣きわめく女のお守なんてごめんだぜ」
「服を返して欲しいのだけど」
「あぁごめんごめん。そりゃあ寒いわな。でもさ、何か隠し持ってないか確認するためにはこれが一番確実じゃね?」
「えぇ、そうね。合理的だわ」
「足の骨折ってないだけありがたいと思いな」

 冷ややかに吐き捨てられた言葉からシルディアは一つの情報を拾った。

(……つまり、わたしに怪我を負わせるなって依頼ってことね。少しずつ情報を引き出せればここがどこか分かるかもしれない)

 シルディアはごくりと息を呑み、両手を握り締めた。
 その瞬間手に握られている何かに気が付いた。
 だが、後ろ手で縛られているため何を持っているのか分からない。
 手のひらと指を器用に動かし、形を確認する。

(これは……ヘアピン……? 握ってたとしても無視されるわね)

 咄嗟に握ったものがヘアピンだと理解し、シルディアは人知れず肩を落とした。

ヘアピン(こんなもの)じゃなく、もっと鋭利なものだったら良かっ……そうだわ)

 天啓のように浮かんだ案。
 それは、ヘアピンで縄を解すこと。

(ヘアピンで縄を解せば少しずつ切れるかもしれない! 長めのヘアピンで助かったわ)

 一か八かの賭けではあるが、シルディアは実行することを選んだ。
 足の拘束さえ解くことができれば、勝機があるかもしれない。
 手を動かしていると悟られないよう会話を続ける。

「ヴィーニャを下ろしてあげて。どうせわたし達は逃げられないんだし、いいでしょ?」
「駄目に決まってるっしょ。頭お花畑か?」
「……それじゃあ傷の手当ぐらいしてあげて」
「はぁ? するわけねぇって。つがい様よぉ、自分の立場、理解してるぅ?」
「えぇ。理解してるわ。あなたはわたしを痛めつけることはできない。違う?」

 睨みつけるように見張りを見れば、彼は下衆びた笑みを貼り付け近付いてきた。
 立ち上がった拍子にローブが揺れ、彼が帯刀していないことに気が付いた。
 今近づかれては駄目だと座ったまま後ろへ下がる。
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