ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「ウケるな! それにしても第一王子には数度会っただけだが、ここまで愚かだとは思わなかった。あのガキ、よりにもよってボリタリアと手を組んだというのか! 権力とカネに頼ろうという浅はかな魂胆が透けて見えるな。実に不快だ!」

 ディルは吐き捨てるように言う。
 エリックとアレキセーヌは心から愛し合って婚約したわけではないことくらい、王宮から距離を置いているディルでも簡単にわかった。
 アレキセーヌの生家であるボリタリア家は、この国で指折りの有力貴族である。ボリタリア家当主は政治的発言力も強い。その上、ボリタリア家の領土は豊富な作物量を誇るため、税収も多い。
 アレキセーヌと結婚することで、エリックは有力貴族の後ろ盾と財力を手に入れることができるのだ。
 これは、どこからどう見ても政略結婚の類だった。

「異世界から来たか弱い乙女を勝手な理由で戦争の最前線で戦わせ、その上全てが終われば用済みとばかりに切り捨てるとは……。クズめ……」

 舌打ちをしたい気分になったものの、目の前にエミがいるため、ディルは何とかそれをこらえた。ここまで忌々しい気分になったのは久しぶりだ。
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