ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「何をおっしゃっているのです。聖女様だから大事に守られて当然ですわ。さあ、部屋に戻りましょうね。身体がこんなに冷えていらっしゃるわ。まずはお風呂に入りましょうか」

 メアリーはそう言って、優しくエミの肩を抱く。
 一方のディルはすぐに頭を切り替え、すぐにいつもの冷血伯爵の顔になっていた。ディルはテキパキとセバスチャンに指示を伝える。
 
「セバスチャン、魔導士たちが集まり次第首都へ向かう。恐らく出発は今日の夜半になるだろう。準備を」
「やはりそうですか」
「これは国家を揺るがす緊急事態だ。さすがにあの国王のそばにいてやらねばなるまい。そうでもしなければ、あの不甲斐ない国王は、国を捨てて国外に逃げかねん」
「なんというか、情けない話ですなあ」
「仕方あるまい。留守中、この屋敷は辺境騎士たちが守るが、万が一の時は頼んだぞ」
「御意にございます」

 セバスチャンとディルは大股で書斎に向かう。
 そんな二人の背中を、エミはやや複雑な顔をしてじっと見つめていた。
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