ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 圧倒的な力を前に、エミを見つめる騎士たちの視線は、巨大なドラゴンを見た時とそう変わらない。第二王子ロイすら、サクラの肩を持つのをためらっている様子だ。
 聖女エミは、間違いなくサンクトハノーシュ王国一強い。百年に一度の災禍であるドラゴンですら、一瞬で葬ってしまうほどに。もう誰も、聖女エミに敵う者はいない。
 だからこそ、あまりにも強すぎる聖女は、もはや崇拝の対象ではなく、畏怖すべき恐怖の対象になりつつあった。

 しかし、いたたまれない空気を破ったのは意外な人物だった。

「おい、何をごちゃごちゃ言っておるのだ。団長は早く指揮をとれ。それから伝令で国王と宰相どもに状況を伝えに走るように。ドラゴンが運河に落ちたのだから、早いところなんとかする必要がある。さもなくば運河の水が汚染され、人々の生活に影響が出るぞ。物流にも影響が出る」

 冷静なディルの一言に、そこにいた一同がハッとした顔をした。確かに、運河はサンクトハノーシュ王国の動脈とも称される、交通と生活の要だ。城下町にその巨体が墜落しなかったのは幸運であったものの、運河に落ちてしまったドラゴンの回収は急がねばならない。
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