ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 指の先や手のひらを、小さな舌がちろちろと這うたびに、くすぐったさと官能とがないまぜになったような感覚が、ディルを襲った。

「お、おい、からかうのもいい加減に……」

 エミが甘えるように抱きついてきた。不意を突かれたディルは体勢を崩されてベッドに倒れこむ。エミがディルに馬乗りするような姿勢になった。

「ハクシャク、あたし、おかしくなっちゃったかも……」

 今にも泣きそうなほどに潤んだ瞳が、ディルを見つめる。呂律の回らない甘ったるい口調が、ひどくなまめかしい。

「……お前、もしかしなくても媚薬が効きやすいタイプだな!?」

 ディルは眩暈を覚えた。
< 200 / 392 >

この作品をシェア

pagetop