ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「はぃいい!? 結婚式は春ということは、例のプロポーズ大作戦はディル様お一人でするおつもりで……?」
「ああ、もちろんだ」
「ご、ご健闘をお祈り申し上げますとともに、くれぐれも、くれぐれも無粋なことはなさいませんよう……」

 ディルは不快そうに眉間に皺を寄せた。

「お前は、私の恋愛方面になるとことごとく口出しをしたがるな」
「ヒィイイイイ! お許しください! しかし、ご自身の恋愛オンチっぷりもぜひ前向きに自覚していただきたく!」

 執事の必死の諫言を見事に無視したディルは、立ち上がってクローゼットから深緑色のフロックコートを取り出し、袖を通した。
 ちょうど時計は首都へ出立する時間の10分前を指している。そろそろ移動魔法の準備も整った頃だろう。
 ディルは輝く銀色の前髪を、無造作にはらった。

「ふん。たかがプロポーズごとき、このディル・K・ソーオン、誰の力を借りずともやり遂げてみせる」
「あわわ……。そのお言葉、エミ様的に言うならば『フラグ立った』とかいうアレなのでは……!?」

 セバスチャンの胸中は圧倒的不安が渦巻いていたものの、ディルは大股で執務室を後にする。
 ディルとエミは屋敷の一階で落ち合い、定刻通りに移動魔法で首都に向かったのだった。
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