ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 改めて向かい合うと、エミは恥ずかしそうに左手を差し出した。ディルは壊れ物を触るような手つきでエミの華奢な薬指に指輪を通す。指輪のサイズはぴったりだった。

「きゃーっ、この指輪おきゃわすぎる! キラキラしてる! それにしても、なんでこんなにサイズがぴったりなの?」
「先日お前が寝ている間に、こっそり計らせてもらった」
「うそぉ!? ぜんぜん気づかなかった!」

 ふたりの眼前は瓦礫の山で、いまだに焼け焦げた臭いが鼻につく。ディルの服はボロボロで浮浪者同然だし、エミはメイクが崩れて顔面が大変なことになっている。
 そんなロマンチックとはほど遠い、どちらかといえば残念なシチュエーションのプロポーズになってしまったものの、ディルもエミも気にしてなどいない。そもそも、ふたりはずっと両思い。シチュエーションがどうであれ、結末はひとつだけである。

「……それで、プロポーズの返事を聞いていないのだが?」
「もちろん、おけまるです♡」

 ふたりは微笑みあい、お互い引き寄せられるように口づけを交わした。
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