ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

執事、懇願する!

「お願いです、ディル様! 清らかなる聖女様に夜伽を命じるのだけはお止めください!! どうか、どうか……」

 広い書斎のシミ一つないカーペットの上に跪き、土下座せんばかりに頼み込むセバスチャンに、ディルはぶ厚い本をめくりながら冷たい視線を向けた。

「先ほどコミュニケーションが不足していると言ったのはお前だろう、セバスチャン」
「わたくしめが間違っておりましたッ! お二人はお茶の時間だけで十分に仲が深まっていますゆえ、どうか、どうか、共寝だけは……ッ!」
「何を大げさな。人は何かとつけて身体を重ねる行為をロマンチックに仕立てようとするが、しょせん快楽を伴う身体の接触だ。昔はどうであれ、今の時代において婚約者同士の肉体交渉くらい普通だろう。どうせ結婚後に子を成すために必ずしなければいけない作業の一つでもある。早めに行って慣れるべきではないのか?」
「うわあ、人として最低の発言をなさる……」

 人として最低の発言だが、ディルはいたって大真面目だった。いや、サンクトハノーシュ王国一の天才は、いつだって大真面目なのである。少なくとも、軽々しく冗談を言うタイプではない。
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