ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 セバスチャンは、だんだん頭痛がしてきた。なんで良い年をした成人男性に対して、「結婚とは」「恋愛とは」「そもそも人付き合いとは」という話をしなければならないのだ。

(何と申せば分かっていただけるだろうか……)

 セバスチャンは青い顔をして唸る。この分からず屋の主人を早めにどうにかせねばならないのに、まるで説得できる気がしない。

 そもそも、ディルが天才である理由の一つは、ひとえに常に学ぶことを怠らない姿勢にあった。「書史を師とし、思索を友とする」という思想を完璧に体現する男である。彼は常に貪欲に知識を求め、さらにその知識を発展させるべく日々ペンを走らせる。王に請われれば、存分にその知識を活用して国家運営に活かしてきた。

 天才は、常に努力を怠らなかったのだ。

 しかし、知識人として多忙な日々を送り続けた結果として、残念ながらディルは一般的な人間関係を全く築いてこなかった。友達と呼べる人間は、ただの一人もいない。当然、人付き合い――とりわけ、恋愛に関しての知識――は、彼の頭からまるっと抜け落ちてしまった。
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