ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
(聖女と一緒にいると、どうしてもあの夜のことを思いだしてしまう……。あわよくば、あの細い腰を抱きたいなどという不埒な思いを抱いて――)

 頭の中が一瞬にしてピンク色になりかけたディルは、パアンと自分の頬を叩いた。ディルの突然の奇行に、セバスチャンが目を見開く。

「……大丈夫ですか?」
「単に邪念を吹き飛ばそうとしただけだ。気にするな」
「し、しかし、けっこう派手な音がしましたよ……?」
「これくらい、なんともない」

 むしろ、こうでもしないと延々とあの夜のことを考えてしまうからたちが悪い。

 そんなこんなでディルはエミと同じ部屋にいるとどうにも落ち着かない気分になるため、適当な理由をつけて話を早く切り上げてしまう。そうなると必然的に一緒にお茶を飲みながら雑談する貴重な時間が減るのだが、もちろん話し足りないので「もっと話しておけば」と後悔する。
 こうなると四六時中エミのことが頭から離れない。しかし、会ってしまえば頭が混乱してうまく話せなくなってしまう。完全に悪循環だ。

 ディルは典型的な恋煩いを発症していた。
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