ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

聖女、魅了する!

 すっかり恋煩いを発症し、エミと上手く話せなくなってしまったことで、ディルはイライラしていた。心の中ではエミと話す時間を心待ちにしているのに、いざ話そうとするとまるで言葉が出てこない。ディルのフラストレーションは溜まる一方だ。
 ディルの頭を悩ませているのは、エミのことだけではない。
 「聖女エミとの婚儀を近々執り行う」とだけ手紙を国王に出したのだが、「本当にあの聖女と結婚するのか」「気が狂ったか」「魅了の魔法にかけられているのではないか」と矢継ぎ早に王宮から手紙がくるようになってしまった。その上、タイミングが悪いことに国境近くの森でなにやら不審なものが目撃された報告も受けている。細々とした雑務に追われ、結婚式の用意は遅々として進んでいない。

 こうしてディルはさらにイライラするのだった。

「クッ、これも全て聖女のせいだ」

 ディルは頭を抱えながらため息をついたものの、セバスチャンは不思議そうに首を傾げる。

「ディル様、聖女エミ様はなにも悪くないと思いますよ。あの方は本当によくやっていらっしゃいます。そうやって、人のせいにするのはどうかと思いますが……」
「お前、やたらと聖女の肩を持つじゃないか」
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