四月のきみが笑うから。

「きれい……とっても、きれい」

「ああ、きれいだな」

「わたし、生きててよかった。これからも、ずっと生きていきたい」


 美しい世界を見るために。

 ずっとずっと、彼のとなりで笑うために。


 先輩がいるから、わたしはこの世界を彩りあるものとして生きていけるんだ。

 そしていつか、わたしも先輩の豊かな世界のために生きていけるようになりたい。


「よかった」

「ちゃんと思えました。たとえ先輩がいなくても、生きたいって思えるようになりました」


 もう会えないと告げられた日、たしかに先輩が離れていってしまった日、一瞬猛烈に死にたくなった。

 けれど、とどまることができたのはきっと、生きることで得られる幸せのかけらを見つけることができたから。


「だけど……わたしの世界が色づくには、先輩が必要です。だから、できるかぎり、先輩のとなりにいたいです」


 先輩がいなくても生きていくことはできるけれど、こんなにも輝きある世界を生きていくことはできない。
 先輩がとなりにいてくれるから世界に色がついて、先輩が笑うから毎日が楽しくなる。つらいこと、悲しいことがあっても、もう一度前を向こうと思うことができる。


「もちろん。俺もとなりにいたいし、いてほしいって思うよ」


 わたしの耳に、優しい響きが落ちてくる。


 引き寄せるように与えられるぬくもり。

 わたしたちを包み込むように広がる青の瞬間は、大切な人と見るブルーモーメントは、泣けるほど美しい眺めだった。

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