四月のきみが笑うから。
物思いに耽っていると、遠くの方から足音が近づいてくる。
(きっと先輩だ)
すぐに分かった。
足音だけで、分かってしまう。
疲れた表情でホームに入ってきた先輩は、ベンチに視線を流し、わたしの姿を捉えると目を丸くした。
立ち上がって駆け寄ると、泣きそうな顔で口角を上げた先輩が両手を広げる。
「先輩……!」
迷わず飛び込んで感じるあたたかさ。
顔を上げると、先輩が大好きな顔で笑っている。
「どうして……待っててくれたのか?」
「さっきまで友達と遊んでたんです。この時間なら先輩に会えるかもと思って、ちょっとだけ」
並んでベンチに座り、会話を交わす。
ハクトくんがいた場所に、今度は先輩が座っている。そのことに、なぜだか少しだけ泣きそうになった。
「瑠胡ってさ……毎朝、花の世話してるだろ」
「え、どうして知ってるんですか」
「見てた……から、かな」
突然そんなことを言われて困惑する。
周りには誰もいないことを確認していたのに、まさか。
いつ、どこで見られていたのだろう。
『綺麗に咲いてるね』
『わたしもいつか、咲けるといいなあ』
花に向かって話しかけているところも見られていたかもしれないと思うと、あまりの恥ずかしさに逃げ出したくなる。
誰もいないと思っていたのに、いったいどうして。