四月のきみが笑うから。
幸せを噛み締めていると、カーンカーンと踏切の音が鳴りだす。
立ち上がると、同じように立った先輩が振り返った。
「瑠胡」
「はい」
名前を呼ばれて返事をすると、少しだけ首を傾げた先輩がわたしを見下ろしていた。
そして、少し躊躇いがちに言葉が紡がれる。
「教室まで迎えに行こうか」
ちらりと試すように向けられた視線に、ふるふると首を横に振る。
それは、わたしの意思を試す言葉というよりは、お互いの考えが一致しているのを確かめるような質問だった。
「いえ、大丈夫です」
微笑みながら断ると、「だよな」と同じように笑顔が返ってくる。
(好き)
クシャッと愛らしく向けられた笑顔に、胸の内からあふれる想い。
付き合っているのなら、という先輩なりの配慮だったのかもしれないけれど、わたしはこの駅で彼と待ち合わせたい。
それはきっと、彼も同じだったのだろう。