四月のきみが笑うから。

 けれど高校に入学してから毎日会うことはできなくなり、電話をすることもなくなった。


「……電話はわたしのせいなんだけど」


 短いぼやきが夜闇に消えていく。

 心優しき親友は入学してから毎日連絡をくれていた。

 どんなに短い時間だったとしても、必ず電話をかけてくれた。


 けれど、中学時代とは比にならないほどの予習復習の量に追われていたわたしは、ついに電話をする余裕がなくなり、自分から断ってしまった。


 今思い返せばそんなに焦る必要はなかったのに、過度な緊張と重圧に毎日押しつぶされていたのだ。

 はじめより余裕が出てきた今、断ってしまったせいでなんだか連絡するのが気まずいという、わけの分からない状態に陥っている。


 なによりも至福で一日の疲れを癒す時間を、わたしは自分でなくしてしまったのだ。


 そんな判断をくだしてしまうほどに、わたしには余裕がなかった。
< 60 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop