【受賞】コワくてモテる高杉くんはせわが好き。

第五章 酔いが回って


 ○学校・教室(放課後)

 せわは中間テストに向けて勉強中。

 美波「せわちゃん帰らないの〜? スタボの新作飲もうよ〜」
 せわ「うーん今日はもうちょっと自習してく! ごめんね」
 麗子「うわ真面目〜。せわいつも成績優秀だもんね。天然だけど」
 美波「頭だけはいいよね。抜けてるけど」

 顔をしかめるせわ。

 せわ「ひと言余計では」
 麗子「じゃ、頑張って。また明日」
 せわ「ばいばーい」

 教室を出て行く二人を見送り、自習を再開する。

 せわ(ここはy=2a-5で……)

 うーんと唸りながら数学の問題を解いていると、上から理人の声が降ってくる。

 理人「そこ違う。たぶん2a-1」
 せわ「え、なんで……?」
 理人「条件が『互いに素』だから、この式は両辺が等しくならないと」
 せわ「あー、なるほど」

 サッカー部の練習着のままの姿を見るに、部活終わりだろう。

 理人「この調子だと、今回は俺の勝ちかもな」
 せわ「それはどうかな? ここは間違っちゃったけど、他は結構自信あるし」

 理人とせわは毎回テストの点数を勝負している。負けた方がご飯を奢る、というルールになっているのだ。ちなみにせわの全敗中。

 椅子を引いて、せわの向かいに座り、頬杖を着く理人。

 理人「それ解き終わったら帰ろ。一緒に」
 せわ「うん。そうしよ。スタボの新作出てるらしいけど飲んでく?」
 理人「有り」

 理人がスマホをいじっている横で、せわは黙々と残りの問題を飲む。すると、ガラリと教室の引き戸が開く。

 先生「お前らそろそろ帰れー。戸締りするぞ」

 せわ「はーい」

 せわ(もうそんな時間?)

 窓の外を見ると、暗くなり始めている。せわは時計の針が七時を指しているのを確認した。
 身支度を整えるせわと理人。荷物を持って、教室を出ようとすると、先生に呼び止められる。

 先生「お前ら。この教科書準備室に運んでくれないか? 先生は今から見回り行かないといけないから」
 せわ「いいですよ。遅くまでお仕事お疲れ様です!」
 先生「ありがとう。朝比奈は優しいな……」

 大袈裟に涙ぐむ先生。

 せわ「……いえ」

 理人は露骨に面倒くさそうな顔をしている。
 重い教科書を二人で分けて運ぶ。廊下を歩きながら、理人が言う。

 理人「お前、ほんとお人好しだよな」
 せわ「そうかな? でもそれを言うなら理人も大概だよ。なんだかんだ言ってこーやって一緒に荷物運んでくれるし、私が勉強終わるの待っててくれてたのだって、夜に一人で外歩くのが心配だからでしょ?」
 理人「…………」

 ※図星。

 せわは理人を見上げて、にっこり微笑む。

 せわ「理人は優しいよね。そういうとこすごく……」
 理人「すごく?」
 せわ「素敵だなって。……へへ」
 理人「…………」

 素直なせわの言葉に、理人はきまり悪そうに目を逸らした。

 理人(俺が優しくすんのは、お前だけだけどな。……鈍感せわ)
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