冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
彩夏が俺を好きじゃなくても、俺はもう離してあげられない。俺には彩夏だけが必要だから。
「……なあ千明。“あっち”の街は変わりないか」
《ええ、全くお変わりありませんでしたよ。今日は天馬様の命通り東宮内高校を休んで西ノ街まで視察に行っていましたから》
「……そうか」
まさしく猫を被ったというような男が俺の質問に答える。
──神楽千明。
それが、俺の直属の配下の名前。
飼い主の機嫌を高めるのがこれほどまでに上手い従順さを持ち合わせた便利な男。
否、どこか危険で用心深い人物。
《……。天馬様、何かございましたか》
ほら、今だって。
俺の寸分の変化にこの男は鋭いのだ。
「……ああ、まあな。彩夏のことでちょっと」