冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


おんぼろアパートや不気味な家が立ち並ぶ地に、いかにも金持ちが乗っていそうなベンツが停められているというのは妙に異色すぎて、僅かな好奇心が湧く。


すると、きっちりとスーツを着こなした20代くらいの色男がこちらに近づいて来ているところだった。

これはタイミングが良いと思って、その男に声をかけようと思った時。


俺の顔を見たのか、それとも何か突然の事態が起こったのか、こちらに背を向けて黒塗りのベンツの方へと速足に戻っていく。



「……は、」



何なんだ?あの男は。

次第に、先程まで抱いていた好奇心が疑心へと変わっていく。

そう言えばあの男、手袋をしていたな……。

ということは、あの車の運転手か?


そういう推測を立てた俺は、そのベンツの後部座席に乗っているであろう主人の正体が知りたくなった。


スーツを来た男は、そのままベンツの後部座席の窓をコンコンとノックして、主と何か話しているようだ。


今は暗くてその男の表情までは見えないけれど、何かに焦っている様子がこちらまで伝わってくる。

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