冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ますます怪しくなってきたな……。
……っ、まさか、俺の顔を知っていたとか。
───マズい。
もし俺の正体を知っている者ならば、あの車に乗っている奴らは全員俺とは敵対する奴らだ。
だって、この東ノ街の夜に生きる者たちなのだから。
俺は彩夏の家とベンツを交互に見て、どんどん速くなっていく心臓の鼓動を必死に抑えた。
ここにいては、彩夏に正体を知られる恐れがある……っ。
それだけは絶対に避けたい。
あちらの動向を探りながら、俺は密かに待機する。
制服のズボンのポケットからスマホを取り出し、一応念の為を思って千明に連絡し、精鋭部隊を揃えてもらう手立てをした。
しばらく静かな時が流れた。
あちらは一向に動く気配がない。
俺に背を向けてベンツへと戻っていった男の姿も今は見えない。
すると……。