冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「………」
こいつは一体、何をほざいている?
「────…っ、は?」
永遠とも思われた沈黙を破ったのは、俺の情けない素っ頓狂な声だった。
この家に、“大事な子”を送り届ける用事があるだと……?
目を限界にまで瞠って、飛鳥馬麗仁と目の前の彩夏の家を交互に見つめる。
体全身がブルブルと小刻みに震えてくる。
震える指先を、彩夏の家に指しながら、俺は精一杯の質問をした。
「…っ、お前の言う“大事な子”って、七瀬彩夏のこと、だったりしないよなァ……??」
ヤバい、マズい。
怒りが抑えられない。
こいつに対する激情もそうだけど、彩夏に対する怒りの感情がどんどん膨らんでいってしまう。