冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


ようやく心の準備ができた、と思って病室の扉を開けたけど、お父さんはちょうど寝ている様子で、結局会えず終いだったのだ。



「ずっと会えていなかったんでしょ?早く行ってあげないと」

「ふふ、はい。そうします。お疲れ様でした」



せっせとわたしを急かす心さんは、わたしのお姉ちゃんみたいだ。面倒見の良い、優しいお姉ちゃん。


……そんな存在は、わたしにはいないけれど。


面会時間は17時の予定だから、それまで後10分ほど。病院の壁に取り付けられた時計を見て、わたしはお父さんの病室に足を向けた。



───コンコン。

病室の扉を控えめにノックする。


その手が微かに震えているのは、きっと父親に会うことを少し怖がっている自分がいるから。



「──…どうぞ」



今日は、前みたいに会えず終いで終わらないようにナースさんを通してわたしが面会したいということとその時間帯をお父さんに伝えてもらっていた。

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