冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ああ、ずっとこんな時間が続いて欲しいなあ……。
そんな夢見がちな思いを抱きながら、わたしは伊吹くんとの通話を切った。
付き合いたての初めての電話の時、自分からは切りたくない、と伊吹くんが言ったからいつもわたしから通話を切ることにしている。
その理由を伊吹くんに聞いてみたことがあった。
その時伊吹くんは頬をほんのりと赤く染めながら、『自分から切ってしまったら彩夏が寂しい思いをしてしまうかもしれないから』と言っていた。
伊吹くんのその優しい気遣いが凄く嬉しくて、思わずうるうるしてしまったのを今でも覚えている。
ベッドに座りながら話していたわたしは、伊吹くんとの電話を終えてからベッドの横にある充電器にスマホを差し、ベッドの上に寝転がった。
そしてそのまま布団を被り、眠りに落ちた。
♦
朝。午前7時36分。
月が役目を終え、太陽が昇ってきた。暗く闇に溢れた危険な匂いを漂わせる夜の街から、わたしたち庶民が生きる太陽の街がまた姿を表してくれた。
電車に揺られ、学校までの道のりを行く。