冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ネイビー色に赤のチェックが入った太もも辺りまでしかない丈の短いスカートと、同じくネイビー色で胸元に校章のついたブレザー。
そして胸元で存在感を示す大きな赤いリボンが今日も朝日に反射してその繊維がキラキラと煌めいている。
わたしの家の近くの駅から乗る電車は、いつも満員というほどではなく、乗客みんなが席に座れるくらいの人数しか乗らない。
その電車を学校近くの駅で降り、ただ続く一本道を歩いていた。左手には大きな廃墟ビルが連なっていて、どちらかというと不気味な雰囲気だ。
一本道とは言えど、路地裏へと続く曲り角がいくつかあったり、背の高い木が歩道の端々に植えられているから日当たりも悪い。
だけどわたしはもう高校2年生で、入学してから1年間以上この道を通い続けていた身。だからそれなりにこういう雰囲気になれたというか……。
春の陽気な清々しい空気が気持ち良くて、思わず吐息が漏れる。
「ふぅ……」
それは、息を吐いた瞬間だった。嵐よりも速く、静かに、わたしは影に潜んでいた何者かに腕をグイッと引かれた。