冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
綺麗に整えられた長くて凛々しい眉。

暗闇の中、闇光に照らされて、よりその存在を強調する真っ黒な瞳。


切れ長の瞳からは、その人の冷酷さが全面的に現れ、鼻や唇、そしてその整い過ぎた輪郭が、この世のものとは思えない麗しく美しい顔をつくっていた。

目は全く笑っていないのに、さっき見えた唇は今も緩く弧を描いて、形の良さを強調している。


その漆黒の瞳に捕らえられれば、わたしはもうその瞳から視線をはずすことなんて出来なくなった。


このお方には、視線を外しただけで無礼に当たる、と思わせるくらいの圧倒的な力の差を、体中に纏う生まれながらの雰囲気がわたしに教えてくれた。


わたしの顎を掴んで離さなかったその手は、今度はどこか優しげにわたしの手を取り、未だにブルブルと怯え続けるわたしを立ち上がらせた。


飛鳥馬様は冷たい流し目でこちらを見やり、幹部の人間が勢揃いして跪く地下の大広間に視線を投げて。


「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」


そんな御冗談を、清々しいほど上機嫌な見目麗しいお顔をして、言ってのけた。
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