冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
美結ちゃんの目の前で、伊吹くんと話すことになったりしたら絶対にボロが出てしまうから、わたしは2人から死角になる生徒たちの間に隠れた。
「ううん、迷惑じゃないよ。けど、ごめんね。俺、彼女いるから極力他の女の子とは話さないようにしてるんだ」
「そ、そうなんですか……っ!申し訳ございません!」
伊吹くんの口から“彼女がいる”という言葉が発されるのを聞いて、目を見開く。
別に、わたしと付き合ってるからって、他の女の子と話しちゃいけないなんてことはないのに……。
美結ちゃんは伊吹くんのその言葉を聞き、真っ青な顔をして頭を下げた。
そんな美結ちゃんを見て、思わず駆け出してしまいそうになったけれど、耐える。
美結ちゃんは、わたしが助けなくても大丈夫。だって、わたしなんかよりもずっと芯が強くて、良い子なんたから……。
そんなことを思っている内に、美結ちゃんは少しだけ伊吹くんと言葉を交わして、こちらに戻ってこようとしていた。
キョロキョロと講堂中を見渡し、姿の見えないわたしを探す美結ちゃんの所へ慌てて駆け寄る。
「…あっ、彩夏いた!もー、また勝手にいなくならないでよぉ…〜心配する!」