惚れた弱み
「どれかには受かると思うんだよねー。一応、スポーツ推薦枠でのオファーもあるんだけどさ、故障してもし走れなくなったらその後が大変だから、一応一般枠で入るつもり。希望してる学部もあるし。」
そう話すと、菜々は明らかにテンションが下がっていた。
「…もしかして、俺がいなくなると寂しい?」
ニヤッと笑って冗談っぽく言ってみる。
すると菜々はテンションが低いまま「…寂しい、です。」と呟いた。
思わず目を見張った。
自分がいなくて寂しい、なんて言ってもらえるとは思っていなかったのだから。
抱きしめたい衝動をグッと抑え、ポンポンと菜々の頭を撫でた。
「まぁ、死ぬわけじゃないんだし、会おうと思えばいつでも会えるよ。橋本ちゃんに呼び出されたらソッコー行くし。」
「ホントですか?」
「もちろん!いつでも話聞くよ。」
「それじゃあ…矢嶋先輩の連絡先、教えてもらえませんか?」
――…マジ!?いいの?
またも目を大きく見開き、自分でも浮かれすぎだと思いながらもクシャッと笑って「いいよ!」と言い、スマホを取り出した。
駅前の広場で、2人立ち止まってお互いのスマホを差し出す。