惚れた弱み
――そんな反応したらますます可愛くなるじゃねーか。
堪えきれずに、思わず口から本音が漏れ出た。
「…綺麗だよ。いつもは可愛いけど、今日は綺麗。」
「あ、ありがとうございます…。」
照れる菜々が可愛い。
博孝は、ニヤケ顔を片手で隠しながら、改札を通ってホームへ向かった。
会場へ向かう途中、2か月程しか付き合わなかった元カノの話が出た。
川上弘美。
彼女からは花火大会の日に告白され、悪い印象がなかったために付き合うことにした。
彼女は嫉妬深く、常に博孝の動向を追いたがっているように感じた。
付き合えば、好きな相手が今どこで何をしているのか、気になる気持ちは分かる。
だが、博孝と川上の、相手に対する温度差があまりにもありすぎた。
結局、川上の熱量に耐え切れなくなった博孝から別れを告げたのだった。
苦い思い出を掘り起こしてしまったが、浴衣姿の綺麗な菜々を隣で見ていたら、苦い思い出など、すぐに吹っ飛んで行った。