惚れた弱み
電車の中、途中から掴めるところが無くなったので博孝の腕に捕まる菜々。
電車の揺れで、時折博孝の体と触れ合う菜々。
電車を降りて、人ごみの中で博孝のシャツを掴む菜々。
本当は彼女の手を取りたくて堪らなかったが、ぐっと我慢した。
相手に気持ちがない時に、自分の思いの強さだけで行動すると、相手がどう思うか、博孝はよくわかっていた。
それは、川上と付き合った時に学んだ感覚だった。
しばらく4人で会場内の出店を見て回り、食事も済ませた。
そろそろ別行動していいのでは、と思っていたところで、菜々の足が止まったのを感じた。
振り向くと、ブレスレットを売っている出店の前で、商品を眺めている。
「何か気になるの、あった?」
声を掛けると、菜々が博孝を振り返って言った。
「ちょっとだけ。ブレスレット、可愛いなーと思って。でもいいです。」