惚れた弱み
「先輩にチョコ食べてもらったあの時から、色々試してみて作るの練習したんですよ。…本命チョコ、です。」
本命チョコ。
あの日、義理チョコのお裾分けをもらうことしかできない程度の存在だと思った。
それなのに今は、大好きな子から、本命チョコを受け取っている。
――もう、無理。
そう思った瞬間、気付いたら自分の唇を、菜々の唇に重ねていた。
柔らかい唇。
ぷにっとしたその感触を、味わうようにして、しばらく唇を重ね合わせる。そして、チュッというリップ音と共に唇を離した。
「せ、せんぱ…!」
突然の出来事に、焦る菜々を、博孝は微笑みながら見つめた。
菜々の顔は真っ赤に染まっている。
「不意打ちでごめん。あまりにも嬉しすぎた。…1個、食べていい?」
「ど、どうぞ。」
菜々が顔を真っ赤にしたままそう言うと、博孝は嬉しそうに1つ頬張った。