気弱令息が婚約破棄されていたから結婚してみた。

 ジェラール様から引っぺがされて、マルセルからアイアンクローを食らいながら私が気絶したあとのことを聞いたのだが、ダークストームドラゴンは倒れたあと今もセイントたちによる浄化作業が続いているという。
 近隣の村や町からもセイントを募って進む作業の中、今朝胸元よりマリーリリー様が摘出されたそう。
 現在は治療が行われており、目が覚めたらすぐに帝国との国境に送られて幽閉されるとのこと。
 せめて国を守るために自らの意思で帝国への牽制となることを選んだ、と国民には説明して納得してもらうことになっている。
 王都の被害は聖殿のみ。
 死者も出ておらず、あれほどの災害が生まれたというのに建物一つの被害はまさに奇跡。
 それもこれもすべて、プロフェットの予言のおかげ。
 ジェラール様のおかげだ。

「そ、それにしても僕って寝ながらでないと『予言』ができなかったんですね」
「そうですね」

 興奮も落ち着いて、隣の部屋にいたジェラール様とソファーに座って話を聞く。
 ジェラール様はずっと、プロフェットとして『予言』ができないことを気にしておられたけれど、今回国の行く末を左右する事件を『予言』した。
 これで名実ともに、国を救ったプロフェットとしてジェラール様の名前は大陸中に知られることになり、歴史にも刻まれるだろう。
 それはとっても誇らしことなのだが、個人的にはジェラール様のことが世間に知られるのが悔しいというか、もったいないというか。
 ずっと私しか知らないジェラール様でいてもいいのに、とか思ったり。

「そういえば、私を受け止めてくれたのは誰だったのでしょうか」
「コーネリスだったと聞いています。まあ、既婚女性を抱きとめるのは妻に申し訳ないから受け止めてそのまま騎士団長にぶん投げた、とか言ってましたけれど」

 ああ、あの第一王子殿下か。
 私の扱いが雑すぎないか?

「でも一応お礼を言わなければいけませんね」
(((ものすごく不本意そう……)))

 国一番の美貌の王子にして大陸に二人しかいないキングクラスの一人。
 頭脳明晰で剣も魔法も国一番の実力者。
 的確な判断とカリスマ性。
 だが、やはりジェラール様の可愛さが世界一だな。
 あんな人に助けられてしまうとは。
 メイドや元部下には羨ましがられるけそうだけれど、ものすごく好みとはかけ離れているからなぁ、あんまり会いたいと思わない。
 コーネリス王子があと二十年若かったらアリだけれど……そんなこと言ったら母上にド突かれる、一桁のショタ王子は普通に違法だしな。
 やはり合法のジェラール様が最強だろ。

「あ、そうだ。奥様にはご報告が遅くなりましたが、今後はジェラール様の寝室に『予言』を聞くために人を配置することになるそうです」
「は?」

 マルセルがにやり、と笑いながらなんかとんでもないことを言い出した。
 おいコラ、いまなんつったよこいつ?
 ジェラール様の寝室に、『予言』を聞くために人を配置するって言わなかったか!?

「ど、どういうことだ!?」
「どういうこともなにも、ジェラール様の『予言』が寝ている間にしか行われないとわかった以上、それを聞き逃さないために表人を配置する必要があるに決まっているでしょう? 諦めてくださいね、これ、もう国の取り決めなんで」

 へっ、と意地悪く笑うマルセル。
 ちょ、待っ……た、確かにジェラール様の『予言』が寝ている間にしか行われないのは、今回初めてわかったこだ。
 今後は予言を聞き漏らさないような処置を行われることは、そ、そりゃ、当たり前だと思うけれども……それって、それって……!!

「私とジェラール様の初夜は!? いや、初夜は終わっているというか、まだ子作りは一度もできていないんだが!?」

 ジェラール様の美味しいところを全部舐め回し、気持ちよくて泣いちゃうジェラール様を思う存分堪能し、私がジェラール様を性的に美味しく食べる日は!?
 立ち上がって叫ぶと、マルセルが満面の笑みで「え? しばらくは無理ですよ。ここ、王都ですから。ジェラール様、ティーロに戻ったらまた体調の調整からです」と言い放つ。
 それを言われた時の衝撃たるや。
 ジェラール様の方を見ると、けほ、と小さな咳。
 ああ、王都にいると雑念を摂取して体調が悪くなるんでしたね。
 魔力量は自然魔力が少ないので過剰にはならず、周囲の人間を魔力酔いさせることもないけれど。

「だ……大丈夫ですか、ジェラール様……あの、体調は……」
「あ、は、はい。このくらいならまだ大丈夫です。今回のことはあの、馬車でフォリシアが僕の予言に気づいてくれて、たくさんの人が救われて……僕は自分がプロフェットで本当によかったと思いました」
「え? あ、は、はい」

 なにを今更、と首を傾げる。
 私はそれよりもジェラール様との子作りを……。

「なにより、あなたは本当に――僕の騎士として最前線で戦ってくれて、ちゃんと帰って来てくれた。そのことにも、ありがとうございます」
「も――もちろんです! 私はあなたの騎士ですから!」

 嬉しそうに、そんなふうに言われたら騎士冥利に尽きる。
 どんな勲章より、賞賛よりも、主人からの労りこそが騎士としての誉れ!
 ジェラール様の足元に膝をついて、その小さくきれいな手を握る。
 しばらく微笑みが私を見下ろしていたが、ゆっくり手を引き抜かれてしまった。
 そして、やたらと神妙な面持ちで、ジェラール様は少し視線を右往左往させる。
 なんだ? 可愛さに上限がなさすぎる。
 なにを言おうとしておられる?

「え、えっと……子作りに関しては……確かに、また……待たせることになってしまうと思うのですが……あの……」

 もじ、と指先をくっつけて見上げてくるジェラール様。
 あなたの上目使いはドラゴンのブレス光線よりも威力が高いご自覚はありますか?

「ま、待っていてくれますか?」
「は? 泣かす?(もちろんいつまででもお待ちしますとも!)」
「え?」
「!? か、隔離! 隔離!!」
「フォリシア様、もう少し寝室でお休みください!」
「おごふっ!!」

 わ、私とジェラール様の子作り初夜がさらに遠退いた。






 完
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