嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 ジョシュアと仲のいい勢力であれば、とにかく粗相がないように接する必要がある。マイアはくすりと微笑んだ。

「でしたら、これからも仲良くしたいですね! 私、社交界に出るのが遅く……色々と知らないことが多いのです。アンヌ様にもたくさん教えていただきたいことがあります」
「ええ、なんでもお聞きになって? でも、わたくしが知っていることなんて、ほとんどジョシュア公が知っていらしてよ」
「そうですね! ジョシュア様はとっても物知りなんです! わからないことは何でも教えてくれますし、私が辛い時には寄り添ってくださって……でも多忙な方ですから。自分で学べることは自分で学びたいです! ジョシュア様の妻として恥ずかしくないように」

 マイアの言葉を聞くアンヌは目を丸くしていた。
 彼女の言葉の節々から、ジョシュアへの愛が滲み出ているのだ。また、ジョシュアも普段から彼女を愛しているような口ぶりで。

 評判の悪い女マイアと、冷酷公爵のジョシュア。
 この組み合わせからは考えられない語り口だった。

「ふ……ふふっ。なんだかマイア様って、とてもおもしろい方なのですね。ジョシュア公もそういうところに惹かれたのでしょうか」

 とにもかくにも、マイアが噂のような悪人だとは思えない。
 マイアとアンヌが和気藹々と話している光景を見て、次第に他の貴族も興味を持ち始めたようだ。

 そんな彼女を横目に観察しつつ、ジョシュアはそっと微笑んだ。

(上手くやれているようだな、マイア)

 どうやら自分が助太刀する必要はなさそうだ。
 そう思い、ジョシュアは他の貴族のもとへ歩いて行った。
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