嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 数名の令嬢と交流し、場の空気に馴染んできたマイア。
 最初は感じていた緊張もほとんど薄れていた。

「マイアさん、調子はどう?」

 折を見てエイミーが話しかけてくる。
 エイミーが事前に貴族の関係性などを教えてくれていたので、他の令嬢との会話でも地雷を踏まずに済んだ。

「エイミー様! とても楽しいです」
「それはよかったわ。この後、ダンスがあるのだけれど……ジョシュア様と踊る準備はできているかしら?」
「はい、大丈夫です」

 今なら体もほぐれているし、ステップを間違えることもないだろう。
 挨拶の時間はジョシュアも忙しそうで、マイアと話す時間もなかった。
 これからは彼の傍で妻として振る舞う時間になる。

 そして。
 マイアがジョシュアを探そうと足を踏み出した瞬間のこと。

「──いた! お姉様!」
「!?」

 ここにあるはずのない声が聞こえ、マイアはビクリと震えた。
 恐る恐る背後を振り向くと……

「まったく、門兵が邪魔をするから遅れてしまったじゃない! お姉様も私を通すように言っておいてよね! 気が利かないのはいつものことだけど」

 義妹のコルディア。
 彼女はなぜか夜会に来ていた。
 露出が多めの赤いドレスを着て、派手な金色のアクセサリーを体中につけている。
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