嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「そ、そうだ……デナリス! 今すぐエリオット公爵家に行き、爵位剥奪を取り消しをするように嘆願してこい! もうそれしかない!」

 一縷の望みは、マイアが嫁いだ公爵家。
 書簡では、マイアのおかげでコルディアの罪が軽くなったとある。

 公爵家に取り次いでもらえば、まだ爵位が存続する可能性はあるだろう。
 しかし、デナリスは書簡を返して告げた。

「お断りします。これ以上、ハベリア家に関わると私も身を滅ぼしかねませんので」
「な、何だと……!? お前、私の命令を無視するというのか!?」

 命令。
 エドニアはそう言った。

 この家族はいつもこうだ。
 必ず自分が上だと断じて、他者を扱き使う。
 マイアもまた犠牲者の一人だった。

「なぜ貴族ではない一般人の命令を、私が聞かなければならないのでしょう? 公爵家に取り次ぎを願いたければ、ご自分で行かれては? まあ……一般人と公爵が面会できるとは思えませんがね。それでは、失礼します」

 書簡が届いた時点で、ハベリア家は貴族ではない。
 デナリスは彼らに見切りをつけ、慌てるように去っていった。次の寄生先を見つけるように。
 商人とはそういう生き物だ。

 去りゆくデナリスを引き止める活力もなく、エドニアは失意に沈んだ。

「あなた! 座ってないで、今すぐジョシュア公爵に会いに行ってちょうだい! 平民になるなんて嫌よ!」
「お前の……お前たちのせいだろうが! お前とコルディアを甘やかさなければ、こんなことには……」
「何よ、私のせいだって言うの!? コルディアと違って、私はちゃんと振る舞っていたわよ!」

 一家の危機を前にして、彼らは責任を押し付け合うばかりだった。

 その後、エリオット公爵家に直談判したエドニアだが、マイアに対する仕打ちを認めることはなく。
 ジョシュアの怒りを買って爵位は剥奪となった。
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