後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
今日は本物
翌日、朝餉の時間、任深持とともに来た馬宰相をそれとなく観察する。全然分からない。
「ちょちょ、見すぎよ」
「そうだ、変に思われますよね」
「それより、任深持様が嫉妬の怒りを馬宰相に向けているわ」
「わあ、二次被害」
夏晴亮が他人に必要以上の興味を見せることがないため、馬宰相を見つめたことでとんだ被害が発生していた。
「すみません。なんでもないです」
「何でもないなら、これではなく私を見ろ」
「はい。努力します」
誤魔化せていないのに無事誤魔化せた。任深持も夏晴亮関連になると正常では無くなるらしい。馬星星が横で胸を撫で下ろす。
──素直な亮亮に嘘を吐くなんて高度なことは難しいわ。私が手助けしないと。
何故なら自分は側室の付き人であり姉代わりだから。馬星星が今度は胸を張って決意した。
そこへ王美文が金依依とともに入ってきた。彼女も馬宰相をちらちらと見ていた。こちらはそれが常なので、任深持が窘めることはない。
いつも通り毒見をし、三人で食べ始める。任明願の件が解決して以来、今のところ一度も毒は入っていない。彼はどうしただろう。まだ後宮内にいてくれたらいいのだが。
「今日は本物ですわ」
隣にいる王美文が耳打ちをしてくる。なるほど、今日は本人らしい。いつも本人なのだから本物も何も無さそうだが、彼女が言うには昨日は偽物だったということだ。
──なんだ。じゃあ、今日は観察してもだめね。
偽物な日が来ても、昨日のような非常に細かい違いであれば分からないのだが、彼女の言う通りしばらく観察を続ける予定だ。
しかし、食事時以外はあまり馬宰相と会う機会は無い。宮女だった頃の方が任務もあり、頻繁に会話していたように思う。この調子だとしばらくかかりそうな気がする。
「王美文様がおっしゃっていることが本当なら、一日で変わるはずないし、偽物説もあながち間違いではないのかも」
朝餉後、妃教育の教師が来るまで夏晴亮と馬星星が話し合う。昨日の段階では馬宰相に傾倒しているために表れた幻覚なのではないかと想像していたが、それも違うらしい。
「偽物って、かなり危ないのではないですか」
「そうね。でも、慎重にならないといけないわ」
とりあえず数日様子を見て、また偽物らしい日がある場合は、任深持が一人の時を見計らって聞いてみることになった。
「ちょちょ、見すぎよ」
「そうだ、変に思われますよね」
「それより、任深持様が嫉妬の怒りを馬宰相に向けているわ」
「わあ、二次被害」
夏晴亮が他人に必要以上の興味を見せることがないため、馬宰相を見つめたことでとんだ被害が発生していた。
「すみません。なんでもないです」
「何でもないなら、これではなく私を見ろ」
「はい。努力します」
誤魔化せていないのに無事誤魔化せた。任深持も夏晴亮関連になると正常では無くなるらしい。馬星星が横で胸を撫で下ろす。
──素直な亮亮に嘘を吐くなんて高度なことは難しいわ。私が手助けしないと。
何故なら自分は側室の付き人であり姉代わりだから。馬星星が今度は胸を張って決意した。
そこへ王美文が金依依とともに入ってきた。彼女も馬宰相をちらちらと見ていた。こちらはそれが常なので、任深持が窘めることはない。
いつも通り毒見をし、三人で食べ始める。任明願の件が解決して以来、今のところ一度も毒は入っていない。彼はどうしただろう。まだ後宮内にいてくれたらいいのだが。
「今日は本物ですわ」
隣にいる王美文が耳打ちをしてくる。なるほど、今日は本人らしい。いつも本人なのだから本物も何も無さそうだが、彼女が言うには昨日は偽物だったということだ。
──なんだ。じゃあ、今日は観察してもだめね。
偽物な日が来ても、昨日のような非常に細かい違いであれば分からないのだが、彼女の言う通りしばらく観察を続ける予定だ。
しかし、食事時以外はあまり馬宰相と会う機会は無い。宮女だった頃の方が任務もあり、頻繁に会話していたように思う。この調子だとしばらくかかりそうな気がする。
「王美文様がおっしゃっていることが本当なら、一日で変わるはずないし、偽物説もあながち間違いではないのかも」
朝餉後、妃教育の教師が来るまで夏晴亮と馬星星が話し合う。昨日の段階では馬宰相に傾倒しているために表れた幻覚なのではないかと想像していたが、それも違うらしい。
「偽物って、かなり危ないのではないですか」
「そうね。でも、慎重にならないといけないわ」
とりあえず数日様子を見て、また偽物らしい日がある場合は、任深持が一人の時を見計らって聞いてみることになった。