後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
それはいつから
侵入者に窓から漏れた月光が当たる。それは確かに、王美文付きの金依依であった。
一瞬怯んだ金依依だが、ここは任深持の自室。加えて深夜。部屋の中に護衛はいない。金依依が再度凶器を向ける。任深持が不敵に微笑んだ。
「私が何も策を講じていないとでも?」
寝台の下から何かが飛び出し、金依依に飛びかかった。雲と雨だ。精霊が視えない任深持は、金依依がよろめいたことで事が上手く行ったことを理解する。そして、枕元にある小さな笛を鳴らした。
細く高い音が辺りに響く。すぐに廊下が足音で騒がしくなった。その間も金依依と精霊の攻防は続き、やがて金依依の姿が薄ぼんやりしてきた。
「本来の姿に戻ろうとしているな?」
間もなくして、目の前から姿を消した。消えたわけではない。精霊に戻ったことで、任深持が認識出来なくなったのだ。雲と雨が精霊を捕えているだろうが安心は出来ない。念のため盾で己を隠しながら、扉が開くのを待った。
「任深持様!」
馬宰相を始め、術師や軍人が入ってきた。術師が揉めている三匹を見とめ、精霊を法術を施した縄で拘束する。その縄に護符を貼った。
「お怪我は御座いませんか」
「ああ、心配ない。予定通りだ」
馬宰相が声をかけると、落ち着いた返事が返ってきた。想定内とはいえ危険を伴うことだったため、無事な姿を見るまでは安心出来ずにいた。
「お連れしました」
馬星星が王美文と夏晴亮を連れてきた。王美文の顔は色を失くしており、今にも倒れそうだ。
「そこに、金依依がいるのですか……?」
「はい。任深持様のお命を狙ってのことです」
「そんな……!」
王美文が涙をぽろぽろと零す。
「申し訳御座いません。全ては上司である私の責任で御座います」
深々頭を下げる彼女に夏晴亮が歩み寄る。
「まさか、金依依が精霊だったとは夢にも思いませんでした」
「彼女はいつから王美文様に付いていたのですか?」
「ずっと昔から。精霊だという様子は一つも見受けられませんでした」
その言葉に、馬宰相が一歩前に出て言う。
「ご安心を。金依依は精霊ではありません。というより、この者は金依依ではありません」
「なんですって!?」
驚愕の事実にこの場にいた全員に動揺が走る。いつから金依依は金依依ではなくなったのか。それでは本物の金依依は今いったいどこにいるのか。
一瞬怯んだ金依依だが、ここは任深持の自室。加えて深夜。部屋の中に護衛はいない。金依依が再度凶器を向ける。任深持が不敵に微笑んだ。
「私が何も策を講じていないとでも?」
寝台の下から何かが飛び出し、金依依に飛びかかった。雲と雨だ。精霊が視えない任深持は、金依依がよろめいたことで事が上手く行ったことを理解する。そして、枕元にある小さな笛を鳴らした。
細く高い音が辺りに響く。すぐに廊下が足音で騒がしくなった。その間も金依依と精霊の攻防は続き、やがて金依依の姿が薄ぼんやりしてきた。
「本来の姿に戻ろうとしているな?」
間もなくして、目の前から姿を消した。消えたわけではない。精霊に戻ったことで、任深持が認識出来なくなったのだ。雲と雨が精霊を捕えているだろうが安心は出来ない。念のため盾で己を隠しながら、扉が開くのを待った。
「任深持様!」
馬宰相を始め、術師や軍人が入ってきた。術師が揉めている三匹を見とめ、精霊を法術を施した縄で拘束する。その縄に護符を貼った。
「お怪我は御座いませんか」
「ああ、心配ない。予定通りだ」
馬宰相が声をかけると、落ち着いた返事が返ってきた。想定内とはいえ危険を伴うことだったため、無事な姿を見るまでは安心出来ずにいた。
「お連れしました」
馬星星が王美文と夏晴亮を連れてきた。王美文の顔は色を失くしており、今にも倒れそうだ。
「そこに、金依依がいるのですか……?」
「はい。任深持様のお命を狙ってのことです」
「そんな……!」
王美文が涙をぽろぽろと零す。
「申し訳御座いません。全ては上司である私の責任で御座います」
深々頭を下げる彼女に夏晴亮が歩み寄る。
「まさか、金依依が精霊だったとは夢にも思いませんでした」
「彼女はいつから王美文様に付いていたのですか?」
「ずっと昔から。精霊だという様子は一つも見受けられませんでした」
その言葉に、馬宰相が一歩前に出て言う。
「ご安心を。金依依は精霊ではありません。というより、この者は金依依ではありません」
「なんですって!?」
驚愕の事実にこの場にいた全員に動揺が走る。いつから金依依は金依依ではなくなったのか。それでは本物の金依依は今いったいどこにいるのか。