後宮毒見師伝~正妃はお断りします~

歴史探し

 図書館の大テーブルいっぱいに才国の歴史書が置かれた。十数冊に及ぶそれは圧巻だ。夏晴亮(シァ・チンリァン)が勉強のために渡された本と同じものもある。

 脊髄反射で頭がくらくらしてくる。しかし、今は勉強ではない。夏晴亮は読んだことがない一冊を手に取った。

「手分けして超国について書かれている箇所を確認しよう。特に場所の手がかりがあったらすぐ教えてくれ」
「承知しました」

 王族ならば幼い頃に才国の成り立ちを学んでおり、超国についてあまり情報が無いことも知っている。ただしそれは、知識として知る必要の無い範囲であることも一因になっているので、もっと詳しく突き詰めていけば、どこかに書かれている可能性は十分にある。

「超国は何故才国から独立したのですか?」

 夏晴亮が本とにらめっこしながら任深持(レン・シェンチー)に問う。

「国の規模が大きくなり、統率を取るのが難しくなったからだと言われている。本当のところ、それが正しいのかは分からない」

 任深持が緩く首を振る。

 自国の歴史として学習したことでも、時間が経ち過ぎて間違えた伝えられ方をしたり、意思を持って隠されたりすることがある。そのため、歴史書をもってしてもこれが正しいという証拠にはならない。

「しかし、一つずつ調べれば、共通する事項があるだろう。書簡が見つかるかもしれない。調べることは無駄なことではない」
「そうですね。頑張ります」

 思いがけず、励まされた気分になった。気を取り直して本を読み進める。

 全てを読まずとも、目次を確認してそれらしい箇所を読めばいいので、分厚い割には一冊にそう時間はかからなかった。ただ、望む答えはなかなか見当たらない。

 難しいかもしれない、そう諦めかけてぱらぱらと本を最後までめくっていた夏晴亮が、ある一点で手を止めた。

「何かあったか?」

 横から任深持が覗き込む。開いた頁は超国について書かれておらず、才国の役職が並んでいた。そこにひっそりと挟まれた紙が一枚。だいぶ古く、ところどころ色が変わっている。

「紙が挟まっていました……手紙、かな」

 それを開いた夏晴亮が首を傾げる。崩した文字がどうにも読みにくく、そのまま任深持へと手渡した。

「これは……」

 部屋にいた全員が集まる。任深持でもすらすらと読むことは難しい。
 白紙を一枚取り出し、分かりづらい文字を現代の書き方に直しながら一文ずつ読み解いていった。
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