極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
そう言って母はトレイを勉強机に置くと、私をベッドに寝かせて布団をかけた。

「大丈夫。寒いの、もう治ったから」

「じゃあ、お熱計ってごらん」

体温計を手渡され、脇に挟む。しばらくすると、ピピピピッと電子音が鳴った。

三九・〇度。私は慣れっこだけれど、母は悲しいらしく、しょんぼりした顔で息をついた。

「お粥、食べられそう?」

「ちょっと食べる」

母が小皿にお粥をよそってくれる。玉子でとじてあっておいしそうだけれど、あまり調子に乗って食べるとまた吐いてしまうので少しだけにする。

「食べたら、病院行こうね」

小皿を支えながら母が言う。

きっと家に戻ってくるのは数週間後になるだろう。今度はなんの本を持っていこうかと考えを巡らせる。

入院生活は退屈だ。もちろん退屈だと思えるのは体調に余裕のある証で、喜ばしいことなのだけれど。本当に具合の悪い人間はなにかをしようなどとは考えられない。

「……ごめんね」

不意に母が切り出した。ふと見れば、母は申し訳なさそうな目をこちらに向けている。

「もっと元気な体に産んであげられたらよかったのだけれど」

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